2018/06/14

平成30年度日本水産工学会春季シンポジウム概要報告

 平成30年度日本水産工学会春季シンポジウム「漁港漁場分野におけるICT活用の現状と技術開発・導入の課題」」が5月14日(月)に東京海洋大学品川キャンパスにおいて開催されました。大学,研究機関,国・地方公共団体,調査設計会社,建設会社などから約200名のご参加を賜る盛会となりました。このシンポジウムは,日本水産工学会と東京海洋大学先端科学技術研究センターの共催で開催されたものです。本シンポジウムでは,ICTやロボット技術を活用した,漁港漁場施設の施工の効率化,漁港施設の機能保全及び漁港施設や漁場の管理の高度化について,行政・研究や現場で先進的,精力的に取り組んでおられる方々から最新の取組や成果のご発表と討論が行われました。
 最初に,水産庁漁港漁場整備部整備課の不動雅之課長補佐より,「漁港漁場整備事業の推進におけるICT活用の方向性」と題して基調講演があり,漁港漁場整備長期計画等を推進する上でのICTの重要性や方向性についての説明とともに,学会,大学・研究機関や民間の協力と取組への強い期待が表明されました。


大竹会長による開会挨拶

不動氏(水産庁整備課)による基調講演

 漁港漁村関係の講演では,「漁港情報クラウドシステムと施設の管理運営」橋本牧(全国漁港漁場協会),「スマートフォンを活用した漁港施設点検システムの構築と運用」奥野正洋(漁港漁場漁村総合研究所),「漁港施設等の維持管理におけるUAV活用の方向性」金井紀暁(アルファ水工コンサルタンツ),「音響機器を用いた水中可視化技術の水産分野への応用」古殿太郎(いであ株式会社 国土環境研究所),「無線LANボートを用いた桟橋上部工下面の点検・診断システムとその運用」本山昇(五洋建設(株)技術研究所),「漁港港湾工事における作業船位置・回航・気象情報システムの構築と運用」長野晋平(公立はこだて未来大学),「漁港の管理運営におけるICT活用(国内外事例の分析より)」中泉昌光(東京海洋大学),以上7つのテーマで発表がありました。


会場内の様子

橋本氏(全国漁港漁場協会)による講演

 続いて総合討論は,漁港におけるICT活用のニーズや可能性はどこにあるか,ICT活用を推進するうえでの課題はなにか,どのように対応すべきか,について討論者や会場の参加者からご意見をいただきながら行われました。討論の中では,シーズとニーズのマッチングが必要となるが,だれが利用するのか,明らかにしたうえで技術開発してことが必要であること,またどのような目的で利用するのかを明らかにしたうえ,どの程度までの能力(スペック等)を求められるのかを想定することが重要であることなどが指摘されました。

 漁場関係の講演では,「石材投入施工管理システムを活用したマウンド礁築造技術」加藤直幸(東洋建設(株)),「GPSデータロガー搭載漁船の操業記録からみた人工魚礁の利用実態(長崎県沿岸域での事例)」桑本淳二(水産土木建設技術センター長崎支所),「漁業者ニーズに対応した漁場環境情報の一元化システムの自主開発と運用」高坂祐樹(青森産技水産総合研究所),「漁場施設情報データベースの活用方策」伊藤靖(漁港漁場漁村総合研究所),「漁業者が活用しているマナマコ資源管理支援システムとその展開」佐野稔(北海道立総合研究機構稚内水産試験場),「ドローンを用いた広域藻場分布の把握手法」佐藤允昭(水産工学研究所),以上6テーマで発表がありました。


佐藤氏(水産機構水工研)による講演

高坂氏(青森水総研)による講演

 続いて総合討論は,漁港分野と同様の課題を中心に討論者や会場の参加者からご意見をいただきながら行われました。討論の中では,漁場ではかなり以前からICTやロボットの技術が活用されてきたが,技術が進むと比較するものも変わり,過去のことを調べることが困難なことがあることから,そこを補完する仕組み,技術が必要であること,また最近はセンサーなど機器の価格も安くなり,ICT活用も広がりを見せているが,今後は制度的な面や活用のためのニーズ把握をどうするか整理していくべきなどの指摘がありました。


総合討論の様子

東海氏(東京海洋大先端科学技術研究センター長,本会副会長)による閉会挨拶

 発表及び総合討論を通じて,会場からも積極的な質問と活発な議論があり,ICT活用への強い関心が改めて感じられました。講演者の方々とご参加いただきました皆様には,活発なご議論を含めて深く感謝いたします。これら講演の内容につきましては,会誌に掲載して会員の皆様にお知らせする予定です。

中泉 昌光(東京海洋大学)

カテゴリ:日本水産工学会の行事