2023/07/24

2023年度日本水産工学会春季シンポジウム概要報告

 

 5月28日に鹿児島大学水産学部で2023年度日本水産工学会春季シンポジウム「産学官で目指す南九州の持続的水産業」が対面式で開催され,約40人の参加がありました。はじめに日本水産工学会の木村暢夫会長から開会挨拶,春季シンポジウムのコンビーナーである鹿児島大学水産学部山本智子教授から趣旨説明があった後,4人の講演者から産学官の取り組み事例についての話題提供がありました。
 鹿児島県水産技術開発センターの湯ノ口亮氏からは,鹿児島県が発刊している漁況週報は60年以上継続してきた実績があり,最近では漁業者への新たな操業支援として数日先の海況予測の開発に取り組んでいることの紹介がありました。
 鹿児島県志布志湾でシラス(イワシ稚魚)を対象としたバッチ網漁業を営む大正水産有限会社の大和章吾氏からは,漁船間で魚群探知機の情報などをリアルタイムで共有する船団運営支援システムの活用事例について説明があり,資源変動の大きいシラス漁において,漁業経営の安定化を図るために始めたピーマン栽培の紹介もありました。
 株式会社中山製鋼所の笠岡祝安氏からは,種子島を拠点として進めてきたアオリイカ人工産卵礁の開発過程,構築してきた産学官連携についての紹介があり,人工魚礁の役割と今後の展望についての意見が述べられました。
 株式会社東京久栄の豊福真也氏からは,鹿児島県内之浦湾を調査対象として取り組んでいる人工海藻を用いたイセエビ幼生の生息場造成の調査報告があり,自身が社会人学生として鹿児島大学大学院農林水産学研究科修士課程に入学するに至った契機についても紹介がありました。
 総合討論では,会場からの意見として鹿児島県水産技術開発センターや島根県水産技術センターでの産学官連携が紹介され,漁業現場にフィードバックできるような成果を見出すには,産学官連携を構築するだけでなく,現場の声に耳を傾けながら粘り強くネットワークを維持していくことの重要性が意見として出されました。
 最後に東京海洋大学の宮本佳則教授から閉会の挨拶があり,春季シンポジウムを盛会の内に終えることができました。

 

春季シンポジウム コンビーナー

江幡恵吾(鹿児島大学水産学部)

 

 

 詳しくは座談会の内容を学会誌に掲載予定ですのでご期待下さい。なお,本シンポジウムの開催運営につきましては鹿児島大学実行委員会の皆様のご協力を頂きました。

 

綿貫 啓(企画担当理事)

 

 



上段左より木村会長, 山本智子コンビーナー(鹿児島大),
湯ノ口亮氏(鹿児島県水産技術開発センター)
下段左より大和章吾氏(大正水産有限会社), 笠岡祝安氏(株式会社中山製鋼所),
豊福真也氏(株式会社東京久栄/鹿児島大学大学院農林水産学研究科)

 



江幡恵吾コンビーナー(鹿児島大)と登壇者の皆様

 

 

カテゴリ:日本水産工学会の行事